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世界初、CO2ガスで自己修復を促進する気体可塑性エラストマーを開発、論文が「Nature Communications」に掲載、三輪洋平准教授らの研究グループ
2019年4月23日 国立大学法人 岐阜大学
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プレスリリース提供元:ValuePress!

岐阜大学工学部 化学・生命工学科の三輪洋平准教授、平健二郎大学院生、倉地寿乃介大学院修了生、宇田川太郎助教、沓水祥一教授らは、CO2(二酸化炭素)ガスですばやく自己修復する、世界初の気体可塑性シリコーンエラストマー(イオン架橋ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマー)を開発しました。この研究成果の論文"A gas-plastic elastomer that quickly self-heals damage with the aid of CO2 gas"が科学論文誌「Nature Communications」に4月23日(火)18時(日本時間)に掲載されました。

エラストマーとは、ポリマー分子を架橋(橋架け)して得られるポリマー材料のことで、引っ張れば伸びて、力を緩めれば縮むゴム弾性を示します。ひとの肌のように柔軟で弾力があるエラストマーは、乗り物のタイヤや輪ゴムをはじめとして日用品から医療品まで、広く利用されています。


※図は添付資料(PDF版プレスリリース)をご参照ください。


今回開発した「気体可塑性エラストマー」(イオン架橋ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマー)※(図1)は、生物の皮膚のように室温で自然に傷が修復することに加え、常温・常圧の気体(CO2ガス)にさらすことで一時的に軟化して自己修復が急速に進む、従来にない材料です(図2)。

※以下「PDMS-xNa」という。xはNa(ナトリウム)による酸性官能基の中和パーセンテージを示す。


従来の自己修復性材料の多くでは、自己修復のトリガーとして熱や光(おもに紫外光)が用いられてきました。しかし、製品に組み込まれた材料の自己修復をおこなう場合、加熱することで製品の機能に悪影響を及ぼすことが懸念されたり、製品の内部に光を照射することが困難な場合があります。一方で、CO2ガスは製品の機能や人体への影響がほとんど無く、製品内部まですばやく浸透するため、PDMS-xNaには幅広い応用の可能性があります。


<本研究のポイント>

・世界で初めて、常温・常圧の気体(CO2ガス)を利用して、すばやく自己修復する気体可塑性エラストマー(PDMS-xNa)を開発

・CO2ガスを用いるため、製品や人体に悪影響を与えず、また、製品内部にすばやく浸透して自己修復を促進することが可能

・マイナス20℃の寒冷環境でもCO2ガスによって自己修復可能


三輪准教授、沓水教授らの研究グループは、イオン成分どうしが凝集する性質を利用してポリマーを適度に弱く架橋し、エラストマーに自己修復性能を付与することに成功していました。(三輪洋平、倉地寿乃介、神原 悠、沓水祥一、"Dynamic ionic crosslinks enable high strength and ultrastretchability in a single elastomer", Communications Chemistry  2018, 1, No. 5.)。

今回の研究成果はこれを発展させ、気体(CO2)により急速に可塑性を高め、すばやく自己修復する材料を開発しました。


●CO2ガスで促進される自己修復のメカニズム

PDMS-xNaは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に少量のカルボキシ基(COOH)を導入し、その一部を水酸化ナトリウムで中和して合成されます(図3上)。ここで、未中和および中和されたカルボキシ基はたがいに集まってイオン性の凝集体を形成し、これがポリマーを架橋するために無色透明なエラストマーが得られます(図1)。このイオン凝集体による架橋は適度に弱く、そのために空気中でも、室温でゆっくりとポリマーの熱運動に由来する架橋構造の組み替えがおこります(図3下)。この架橋構造の組み替えのためにPDMS-xNaは自己修復します(図2)。一方で、PDMS-xNa がCO2ガスにさらされると、CO2がイオン凝集体に溶け込むことで、イオン凝集体によるポリマーの架橋が弱くなり、架橋構造の組み替えが加速されます。それにともなって可塑性が顕著になり、すなわち、材料が軟化するために、CO2ガス中では空気中と比べて急速に自己修復が進行します(図4)。


●CO2ガスによるPDMS-xNaの軟化

PDMS-xNaは、CO2ガス中で可塑化されて顕著に軟化します。たとえば、PDMS-80Naの弾性率(材料のかたさの指標)は、空気中(Air)に対して窒素(N2)中では少し増加しますが、CO2中では瞬時に低下し、材料が軟化することがわかります(図5)。また、空気中では再びもとの弾性率に戻ります。さらに、一定の応力(力を加えた際の抵抗力)のもとでの試料片の変形を測定するクリープ試験でも、空気中に比べてCO2中ではPDMS-80Naが顕著に軟化することがわかります(図6)。


●CO2ガスによる自己修復の促進

CO2ガスはPDMS-xNaの自己修復を促進します。たとえば、空気中とCO2中の室温でPDMS-80Naを自己修復させた場合の修復率を比較すると、いずれも時間経過にしたがって修復率が増加しますが、CO2中の方が空気中よりも10倍程度はやく自己修復し、約8時間でほぼ完全に修復します(図7)。ここでは、図2のように切り離したPDMS-80Naを、空気中とCO2中で自己修復させた時の修復率を比較しました。

さらに、CO2ガスを利用することで、寒冷環境でも自己修復を引き起こすことが可能です。図2のように切り離したPDMS-80Na を寒冷環境下でCO2に一定時間さらして回復させた後、断裂するまで伸長させたところ、切り離していない初期状態のPDMS-80Naと比較して、マイナス10℃では3日後に約50%、1週間後に90%ほど自己修復します。また、マイナス20℃であっても1週間後に50%ほど自己修復します(図8)。


【発明の意義】

本研究により開発した気体可塑性シリコーンエラストマー(PDMS-xNa)は、熱や光(紫外光)をトリガーとする従来の自己修復性材料とは異なり、気体(CO2ガス)により可塑性を高め、自己修復します。そのため、製品の機能や人体に悪影響を及ぼさずに、製品内部の材料でも自己修復することができ、幅広い製品に応用できる可能性があります。例えば、体に密着するウェアラブル端末やセンサー、人工皮膚、異種の材料をつなぎ合わせる接着剤などへの応用の可能性が考えられます。

また、常圧・常温でプラスチックの可塑性を高めることができれば、プラスチック加工において消費するエネルギーを削減できる可能性があります。


【論文情報】

掲載雑誌: Nature Communications

タイトル: A gas-plastic elastomer that quickly self-heals damage with the aid of CO2 gas

論文著者:三輪 洋平*, 平 健二郎, 倉地 寿乃介, 宇田川 太郎, 沓水 祥一

(*:責任著者)いずれも 岐阜大学 工学部 化学・生命工学科

掲載日: 2019年4月23日(火)18時(日本時間)

DOI: 10.1038/s41467-019-09826-2


【本件に関する問い合わせ先】

岐阜大学総合企画部総務課広報係 担当:佐藤、中江

Tel:058-293-3377/2009

Fax:058-293-2021

E-mail:kohositu@gifu-u.ac.jp



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